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【FTIメンバー紹介:アソシエイト・加藤尚吾】リスクテイクする起業家にバリューで応えたい その原動力となる“天邪鬼な思い”

連載 メンバー紹介 加藤

株式会社ファストトラックイニシアティブ(以下、FTI)のメンバー紹介をする連載です。今回は、7月にセルシュートセラピューティクス株式会社(以下、セルシュート)に追加投資を行ったメンバーのひとり、FTIアソシエイトの加藤尚吾(かとう・しょうご)にインタビュー。FTIに参画した経緯や投資活動にかける思いなどを聞きました。

自分にできることは“リスクをとること”だった 

ーーこれまでの経歴や、FTIにJoinした理由を教えてください。

東京電機大学工学部を卒業後、大学院の修士課程は東京工業大学に進学しました。いきなりプライベートのことで恐縮ですが、修士1年のときに大失恋しまして…当時はとても落ち込んだのですが、「何か新しいことをして、自分を変えねば」と思い立つ転機となり、社会人としての経験を積む意味でも木村安西を通してFTIでインターンすることになりました。私の研究室の指導教員がFTIでイノベーションエキスパートを務める仙石だったこともあり、FTIの活動には自然と興味を募らせていました。およそインターンとは思えない実践的な活動に関与する中、いよいよ就職活動の時期にさしかかりました。FTIでの活動を通じて、大企業よりもスタートアップに関わりたいという気持ちが高まってきたこともあり、心の中では「いきなりキャピタリストは無理かな?」と思っていたのですが、木村と安西にその思いをぶつけてみました。熱意を持って、粘り強く伝え続けた結果、ようやく正式に社員として採用されることになりました。

ーー大企業よりもスタートアップを選んだ理由は?

大学選択のときには、実家から1番近かった理工系大学である東京電機大学を選び、首席で卒業しました。ただ、自信を持って進学した東工大の大学院では大きな挫折を味わいました。周囲には驚くほど優秀な同級生がたくさんいました。卑屈な思いで大学院生活を送るなか、あるとき優秀な人はたいてい大企業への就職を目指していることに気付きました。「よーい、どん」で同じレールの上を走っても勝ち目はない。人とは全く違うことをして抜きん出たい、という“天邪鬼な思い”が沸々と湧いてきました。では、普通ではなく違うことといったら何か? それは「リスクを取ってアントレプレナーになること」もしくは「アントレプレナーを支援して社会に貢献すること」だと思ったんです。更に、今の自分に何ができるかを考え続けた結果、VCという選択に至りました。その当時、自分が選ぶことができなかった選択をして日々邁進する起業家の方々には本当にリスペクトしています!

キャピタリストとなった今だから感じるのは、当時から「イノベーションへの課題意識が強かった」ということです。日本にイノベーションを起こしたい、それに直接関わりたいという思いがあり、最もそれに近い距離にいて一定の包括性を持つ、そこを魅力に感じてVCを選択したのかもしれません。

インターン時代から熱望していた投資活動

ーー得意とする投資領域は?

FTIではバイオテック案件に関わらせていただいていますが、私自身は高校・大学と機械工学を専攻していたため、センシングやハード・デバイスを絡めたヘルステックビジネスにも強い関心があり、担当することも多いです。また、FTIでは大学発スタートアップの立ち上げに関与する経験を重ねてきたため、創業初期については多くの知見があります。

ーーセルシュートを投資先に選んだ理由・思い入れを教えてください。

インターン当時から、「キャピタリストとしてスタートアップをつくりたい、成功させたい」という思いを持ち続けていました。そのスタートアップが自分の出身大学ならなお良いと思っていました。同社は過去には東大に所属され、そして現在は東工大に在籍する先生方(村田昌之教授、加納ふみ准教授)の技術を基に創業しています。技術的な競争力に加えて、かねてより熱望していた“出身大学のスタートアップへのサポート”ができている点で、とてもやりがいを感じています。

セルシュートは数年かけて先生方とFTI、そして創業メンバーとの間でインキュベーションをしてきており、設立の業務支援から、事業計画・資本政策の立案に至るまで密な支援をさせていただいています。

投資先との信頼関係を築くために心がけていること

ーー投資していてテンション上がったこと、達成感・充実感・やりがい・大変さを感じた瞬間はどんなときですか?

スタートアップの勢いは単調に増加するわけではなく、どこかで沈む場面、風向きが悪いタイミングが存在します。そこを何とか乗り越えたときにやりがいを感じます。いかに早く大局的に課題点を感知し、先手を打てるようスタートアップ側に伝達して行動してもらえるかは、キャピタリストとしての力量を問われる場面だと思っています。

また投資先の起業家や社員さんとのディスカッションを通じて、お互いの気付きにつながっていくタイミングにおいてもやりがいを感じます。VCは出資をする株主という点で下駄を履いている所もありますので、一足飛びに一流の起業家のみなさんと本気の議論ができることは光栄ですし、少しでも価値を出していかねばと思っています。

ーー風向きの悪さをはやく察知し、伝達するために、していることは?

まずは信頼関係を築くことが重要だと感じています。takeだけではなくgiveの精神も大切です。助言をするだけでなく実際に手を動かす、足を運ぶ…などを心がけています。具体的に言うと、社内のタスクフォースに参加したり、週次のミーティングに参加したりと、“点”よりも“線”でバリューを発揮すること、更に当社のネットワークも絡めて“面”で貢献していくことを意識しています。理想は1回のミーティングで金言となるような助言、つまり“点”でバリューを発揮できることがベストですが、最近のスタートアップ支援は、株主も含めて総力戦で取り組む必要性を感じています。

長女とのかけがえのない時間が「最高」

ーー休日の過ごし方、趣味について教えてください。

船釣りのときの写真。日焼けのせいで3日間湯船に浸かることができなかった

最近は4月に生まれたばかりの娘と遊ぶ時間は、何物にも代えがたい最高のひとときです。趣味は釣りとキャンプ、あとこの2年くらいはサウナにハマっています。日本酒も大好きです。

釣りに関連して魚が好きなので、木村とは良く魚談義をしてます。ただ木村は鯉やフナなど観賞用の魚に詳しく、一方で私は食用の魚を釣ったり食べたりすることが好きなため、魚談義が盛り上がると、飼う側目線の木村と釣って食べる側目線の私では議論が紛糾してしまいます。投資方針についてはそこまでは白熱しないのですが…。

家庭を持ち娘の成長を日々目の当たりにしていると、時間をかけて魚を育てる気持ちも少しずつ分かってきたような気がしています。愛する娘と共に、近い将来、家族でキャンプに行く日を夢見ています。